「ときは今あめが下知る五月哉」



□ あとがき


この漫画は、明智光秀を主人公にした時代劇ものの創作漫画です。

多くの文献を元に描いておりますが、
史実に近いものやそうでないもの
いろいろ混ぜ合わせていて、
さらに自己流の少年漫画チックな描き方も加わって
フィクション性が高い作品になっているかと思います。

2020年のNHKの大河ドラマの主役にもなり、
近年見直されている武将ということもあり、
1994年に描いた漫画ですが、
高精細なスキャン(600dpi)とフォトショップによる補正、
一部修正(作画・写植)…と再編集して
公開することといたしました。
特に写植の文字が以前ウェブ上に公開したバージョンでは
見にくかったと思います。
(注意)旧版よりはきれいになっておりますが、無償版(体験版)では有償版と比べて精細さが下がります。

内容に関しましては描いていた当時を振り返ると、
光秀は作品によっていろいろな描かれ方をされますし謎の多い武将ですが、
一応史実の人物ですので考証その他結構苦労した記憶があります。
図書館・古本等で関連書物を10冊くらいは読んだと思いますね。

オリジナルキャラの女の子の夢(ゆめ)という名前は、
千葉真一が光秀をやった「太平記」というドラマの、
こちらもオリジナルになるキャラ夢御前から名前を1字拝借しました。
この作品は、トンデモ光秀で史実と違う点も多かったですが、
ある意味面白かったと記憶しています。
近年だと唐沢寿明の「明智光秀」の光秀もぶっとんでました。
こちらもフィクション性は高いですが、なかなかだったと思います。
見た中でベスト光秀は、NHK大河ドラマの
「国盗り物語」の近藤正臣の光秀ですね。
かなり理想的な光秀像です。
…といってもリアルタイムではなく総集編で見ただけなのですが
(とても昔の作品なので…)。
「国盗り物語」は総集編のみしか現存してなくて残念ですね。

あと自分の戦国武将知識として忘れてはいけないところとしまして、
光栄のシミュレーションゲーム「信長の野望」があります。
このゲームはMSXという当時のパソコンで
大名の名前しか出てこない1作目からプレイしているのですが、
2作目、3作目とどんどん進化していき、
武将もたくさん登場しますので知識欲を掻き立てられました。
光秀はその中でも能力値が高い武将で、気になる武将でしたね。
当時は信長の野望の作者「シブサワコウ」というと、
伝説的なゲームクリエイターとして謎の人物でした。
今では大河ドラマにも光栄が協力していたりして、
昔から知っていると趣深いところですね。



□ もし今、「本能寺の変」ものを作るとしたら


本能寺の変の原因はなんだったのか?
いままで多くの人が研究しています。
漫画では怨恨説に天下泰平の理想のためにという説を
混ぜた感じになっていますが、
他にもいろいろな説がいままで考えられてきました。
原因がわかる資料がほとんどなく、
数百年続くミステリーとなってしまっていて
戦国時代の創作の中でも描きがいがある
面白い事件ですね。

最近ふと思いついたのは、
全員で示し合わせて本能寺の変を
起こしたのではないかというストーリーです。
信長に恨みがあったり危険に思っている人物・勢力は、
たくさんいると思われますし、
意外と真相なのかもしれません。
特に秀吉の大返しや、
将軍や本願寺が織田軍を引き継いだ秀吉と
その後すぐにうまくやっていたり、
辻褄が合う感じです。
原因が見つからないのではなく、
原因がわからないように工作されたのだとしたら…?



…まぁ、これはアガサ・クリスティの
オリエント急行殺人事件を見て思いついたのですが。

では、残りは作中のシーンで、
自分的に気になった部分の紹介です。



□ 作中シーンの紹介


「是非に及ばず」

信長の最後の言葉とされる。
当時は「やはりあの男か…」と、
自分で考えた解釈をそのままセリフで入れたのですが
わかりづらいので今回はそのまま史実とされるこの言葉にして、
モノローグで自分の解釈をいれました。
作品上一番の悪役でしたので、
最期に潔いところも描いて器の大きさを出したかったという感じ。
そのあとの山崎の合戦での秀吉もしかりです。
信長が生きている間は腰巾着な嫌味キャラでしたので、
最後にしたたかでシリアスなところも描きました。


「巻物に西暦が…」

これは、お遊びで信長が西洋かぶれだということで
和暦ではなく西暦にしてみました。
次のコマでもアップにして、
つっこみ待ちだったのですが今まで指摘ゼロですね。
素で間違えていたというと「中国」と言っちゃってたところですね。
今回「明」に訂正いたしました。


「着物」

読んだ人から着物の裾が短いという指摘が昔あり、
今でも着物描くのは好きではありますが苦手意識あります。
身近になくて着たことないとなかなかわからないものですね。


「裸踊り」

家康の裸踊りのところは「花の慶次」のオマージュです。
ネタ元は信長じゃなくて秀吉ですが、これもつっこみ待ちなシーンですね。


「光秀の母の磔」

本作品では、ゆめの死とともに
強烈な謀反の原因として描いていますが、
これは昔の講談の作り話の確率が高いです。
現地では町おこしにも使われている
メジャーなエピソードではありますが。


「光秀の外見」

シーンということではないのですが、
光秀の外見が少年漫画の主人公してますね。
髪の毛もフサフサですね。
あだ名がキンカン頭なのだから、キャラデザインとしては
配下の斎藤利三のほうが史実の光秀に近いと思います。


このように時代劇ものってフィクションだらけですので、
すべてを信じすぎないようにしてくださいね!
自分も翻弄されて資料を読んだりネットで検索
(描いた当時はネットはなかったですが…)して
やっと気づく(しかしそれも確かとは言えない)
ことが多いですが、誰がいつ創作したのか…と、
それもまたさらなる趣があります。





では、こんなところで…
読んでくださった方ありがとうございます!



2020年12月30日
鈴木カナメ

 

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